2018年6月12日 宇宙倫理学(伊勢田哲治)
人間が宇宙開発を進めていく過程で生じる様々な問題について、倫理的観点から考える。
まず倫理の視点について、
普遍化可能性テスト(同じ理由を他の事例に当てはめても問題ないか)を例に挙げ、
偏見や現状肯定ではなく客観性のある原理に基づいて論理的に議論する立場を解説する。
近い将来起こり得る宇宙倫理学的な課題として、
火星へ人を送ることを倫理的観点から考える場合、
宇宙飛行のリスク(身体的・心理的健康問題、放射線被爆問題など)に対して、
他のリスクを伴う公的任務(消防士、警察官、自衛官など)と共通するものとして考えるべきか、
そもそも火星ミッション自体を放射線業務と考えるべきか、という議論等が生ずることを提示する。
また、人類は他の天体を現状維持する義務を持つのかという問いについて、
火星のテラフォーミングを例とする場合、
そもそもテラフォーミングのメリット等の道具的価値を考えると同時に、
固有の価値を検討する必要性について指摘する。
我々は人類を存続させる義務を持つかという観点から考えた場合、
人類の固有の価値や長期的な存族と短期的な存続など、様々な面から思考する必要性が出ることを指摘する。
このような宇宙開発における諸問題に対して、倫理学は、何が問題であり、
その問題を解くにはどのような作業が必要であるのかを理解するのに役立つ学問であることを講義する。