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2018年6月19日 宇宙霊長類学(湯本貴和)

これまでの霊長類研究を基礎として、宇宙霊長類学とはなにを目指す研究かを解説する。 まず霊長類について広く概観し、 ヒトを含めたサルの仲間で、主に熱帯・亜熱帯地域に生息し、 現在約450種類ほどが知られていること、 日本はヒト以外の霊長類が分布する北限地域であることを解説する。 また、京都大学霊長類研究所は活発に霊長類研究を行ってきたことや、 地獄谷におけるニホンザルの温泉入浴や、餌付けのみならず人付けの概念、 チンパンジーによる道具の使用など特徴的な文化を持つ野生集団の存在を紹介する。 これらを通し、霊長類学とは、人とはなにか?ということを研究する学問であることを解説する。 霊長類学を宇宙霊長類学へ拡張する時、 宇宙への進出を人類進化の延長として捉えると、 霊長類学におけるこれまでの研究の蓄積は、新しい環境への適応を支援する方法として、 実験動物学・比較認知科学などの観点から有人宇宙学の創出に貢献できることを紹介する。 ヒト以外の霊長類からヒトへの進化を考えた場合、 森林からサバンナへの進出という環境変化が大きな起点となっている。 誕生した近代人類が世界各地へ広がっていく過程を考えると、 約2000~3000年前と比較的最近行われたミクロネシア諸島のような海洋をまたぐ進出は、 アウトリガー式カヌーのような高度な道具や、天文学を用いた航海技術が必要であった。 これらと人類の宇宙進出をアナロジー的に考えると、 現代はまさに高度なロケット技術や科学技術の発展によって宇宙進出が実現する段階であり、 これら宇宙進出による環境変化は、人間の進化の一形態となると考えられることを指摘する。