2018年7月10日 宇宙政策(中野不二男)
日本における宇宙政策の歴史と実情について解説する。
まず、宇宙開発における技術の民生利用と軍事利用について、
Dual-Use(用途の両義性)という考え方が長年なされてきた現状を紹介する。
歴史的には、1969年に我が国の国会で、宇宙の平和利用に関する国会決議が全会一致で採択された。
この国会決議によって、
多くの日本の宇宙技術開発・宇宙科学研究・宇宙事業が、
軍事的利用にも転用できる可能性を持つものとして、
その発展・実現の機会を失ってきたことを紹介する。
例として、GPSや加速度センサーを応用したカーナビシステムは、
民生利用を目指したものであるがその技術は巡行ミサイルの誘導にも利用できてしまう。
また、地上観測衛星の技術は、大地震などの被災状況の迅速な分析や、
古代道路の探索などの宇宙人文学研究、植物の育成状態を調査する農業的用途でも用いられるが、
地上偵察のような軍事への転用も考えられなくはない。
これらのように宇宙開発技術は、時には民生利用され、時には軍事利用される。
これは技術の問題ではなく、利用する用途の問題であるが、
日本は先の国会決議により軍事への転用の可能性のあるような技術開発は認められてこなかった上に、
これらの問題を今後誰がどう判断するべきか曖昧なままになっており、
宇宙政策的な大きな課題を持っていることを指摘する。
今後の議論として、
①Dual-Useの前にDual-Function(機能の両義性)として考えるべきではないのか、
②宇宙の平和利用に関する国会決議は、結果的には宇宙開発の進展のための議論の機会を閉ざしてしまったのではないか、
③誰も否定のしようがない文言(国会決議文)は、むしろ研究の自由を拘束してしまうのではないか、
を考える必要があることを指摘し、
宇宙開発利用の拡大や人類の宇宙進出を検討する上で、
個々人がこれらについて考える重要性を説く。