
宇宙倫理学教育プログラム(SEEP)
新着情報
(2025.04.10) 2025受講者募集(学部・大学院コース)の受付が終了しました。 |
宇宙倫理学教育プログラムとは
修了要件
必修科目
宇宙倫理学入門
倫理学講義
宇宙総合学
宇宙学
宇宙倫理学演習
宇宙倫理学ゼミ
到達目標
知識
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- 人類の宇宙進出の現状と展望を理解する。
- 人類の宇宙進出に伴う倫理的諸課題を理解する。
- 宇宙倫理学的課題に関する既存の見解や論証を理解する。
- 規範倫理学と応用倫理学の理論や概念について基本的な知識を習得する。
- 宇宙倫理学研究に関連する諸分野について幅広い知識を習得する。
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スキル
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- 宇宙倫理学に関する学術文献を正確かつ批判的に読解する能力を身につける。
- 宇宙倫理学的課題について建設的なディスカッションを行なう能力を身につける。
- 宇宙倫理学的課題の解決に資する研究を実施する能力を身につける。
- 宇宙倫理学に関する効果的なプレゼンテーションを行なう能力を身につける。
- 宇宙倫理学研究の成果を適切に文章化する能力を身につける。
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代表挨拶
2025年4月から宇宙倫理学教育プログラム(SEEP)は4年目に入ります。SEEPは、複数の科目を受講しながら宇宙倫理学を一から集中的に学ぶという世にも珍しい教育プログラムです。もとは文部科学省の委託事業として開発・実施されたものでしたが、委託期間の終了後も京都大学における教育・社会貢献事業として継続しています。宇宙倫理学というのは、宇宙関連活動において生じる様々な社会的・人間的な問題について倫理的な観点から検討する学問です。少し別の言い方をすると、宇宙開発をどう進めていくべきか、宇宙法や宇宙政策をどう構想していくべきか、そういったことを根本的なところから考える学問です。宇宙倫理学の問題はいずれも複数の分野が交差するところで生じるため、その研究は半ば必然的に学際融合的なアプローチを要求します。毎年、多様な背景を持つ受講者が集まり、分野越境的な議論を交わしながら宇宙倫理学を学んできました。
プログラムが始まった2022年4月を振り返ると、当時は、ロシアが人工衛星破壊実験を実施し、さらにウクライナへの軍事侵攻を開始した直後で、スペースXがスターリンクによるインターネット環境をウクライナに提供するという興味深い動きを見せていました。日本国内でも、航空自衛隊の宇宙作戦群が新編されたこともあり、宇宙安全保障やデブリ問題への注目度が高まりつつありました。ビジネス関連で言うと、国連COPUOSが宇宙資源ワーキンググループの設置を決めたなか日本で宇宙資源法が施行され、また、前澤友作氏がISS滞在の宇宙旅行を終えたばかりの頃で、宇宙資源や宇宙旅行といった未来的ビジネスの問題が従来より現実的なものに見え始めていました。宇宙科学の分野では、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が打ち上げられ、展開作業を完了したことが話題になっていました。
こうした目まぐるしい状況の進展は、宇宙倫理学教育の重要性を際立たせると同時に、その難しさを予感させるものでもあり、教育内容の構想に悩みながら初回を迎えたことを思い出します。あれから3年、教員・アシスタント・受講者がともに試行錯誤しながら取り組み、SEEPは安定したプログラムへと成熟しつつあります。今後も、これまでの成果を踏まえつつ、新しい試みも取り入れながら、宇宙倫理学的な関心を持つ人たちの学習・研究・交流の場としてのSEEPをさらに発展させていきたいと思います。
清水 雄也(理学研究科SACRA宇宙学際研究グループ・特定助教)
協力教員からのメッセージ
伊勢田 哲治(文学研究科・教授、元SEEP代表)
2023年から2024年にかけてSEEPの代表をつとめさせていただきました。宇宙倫理学という分野は国際的にみてもまだできたばかりの発展途上の領域ですが、宇宙開発が急速に身近なものとなる中で、今から考えておかなくてはならない問題は多くあります。たとえば月に基地を建設するとき、環境への配慮は必要なのでしょうか? 小惑星の資源は誰のものなのでしょうか? スペースコロニーでの生活には地球と同じルールが適用されるのでしょうか? こうした問題は倫理学者だけが考えていればいいわけではありません。宇宙開発が適切に行われるためには、開発に携わる現場の人たちが宇宙開発の倫理的側面について理解している必要があります。また、宇宙開発についての政策決定においては、何よりも市民が宇宙開発に関心をもち、どのように開発が進められていくべきかについて意見を発信していくことが大事です。受講生のみなさんには、このプログラムで様々な問題について考えていく中で、そうした力を身につけていっていただければと思います。
児玉 聡(文学研究科・教授)
「宇宙倫理学」の「倫理学」について説明します。「倫理」と言うと「個人の内面の問題」とか、「人によって相対的なもの」と考えている人もいるかもしれません。しかし、必ずしもそうではありません。宇宙での活動も含め、集団で生活する際には、一定の決まり事(規範)が必要です。例えば「何も悪いことをしていない人を殺すことは不正である」というのは個人の内面だけの問題ではなく、また、人によって相対的であっては困るものです。倫理学は、法や道徳などの規範についてのこうした一般的な意見も含め、規範について批判的に検討し、どうすればよりよい規範を作ることができるかを考える学問です。今後、みなさんが宇宙開発に関する規範を検討する上でも、倫理学の基礎知識を身に付けることが必須だと言えます。
近藤 圭介(法学研究科・准教授)
望ましい宇宙開発を考えるにあたっては、その望ましい進め方だけではなく、それを規律するルール、つまり宇宙法の望ましいあり方もまた考える必要があるでしょう。とりわけ、宇宙開発のアクターが国家から新興の民間の宇宙ベンチャーにまで拡大し、それに伴ってこれまでにはない様々な宇宙関連ビジネスが提供・模索されている昨今の状況に、既存の宇宙法はうまく対応できていないところも見られます。そこで、新しい状況に合わせた望ましい宇宙法を構想する必要があるわけですが、この作業を行うにあたっては様々な視座が必要になります。宇宙倫理学は、そのような視座を、倫理学の姿勢や知見を通じて提供するものです。宇宙開発の、そして宇宙の法制度の望ましい未来を考える皆さん、ぜひ宇宙倫理学を学んでみましょう。
リサーチアシスタント
高口 和也(文学研究科・博士後期課程)
連絡窓口
本プログラムに関するご質問等については、以下のメールアドレスまでご連絡ください。
seep.usss.ku [@] gmail.com
*期限のあることがらに関するお問い合わせは余裕をもってお送りください。返信が数日後になる場合があります。
受講応募関連情報
2025年度
・受講応募登録フォーム2025(受付終了)
・受講者募集要項2025
・必修科目時間割2025
(「宇宙倫理学入門」「宇宙倫理学ゼミ」の初回は4/21の予定です。)
(4限は15:00–16:30、5限は16:45–18:15です。)
2024年度
・受講応募登録フォーム2024(受付終了)
・受講生募集要項2024
・必修科目時間割2024
2023年度
・受講応募登録フォーム2023(受付終了)
・受講生募集要項2023
・必修科目時間割表2023
・選択科目一覧2023
・「宇宙倫理学入門」一般公開の案内
2022年度
・受講応募登録フォーム2022(受付終了)
・受講生募集要項2022
・必修科目時間割表2022
・選択科目一覧2022
運営:京都大学大学院理学研究科附属サイエンス連携探索センター(SACRA)宇宙学際研究グループ(グループ長:鶴 剛)
※ 本プログラムは、文部科学省宇宙航空科学技術推進委託費「人文社会×宇宙」分野越境人材創造プログラム「倫理学を基盤とした宇宙人材育成プログラムの開発と実践」(2021–2023年度)によって開発されました。